人手不足も物価高も、突然来た問題ではない。飲食店が苦しくなった時に最初に見直すべきこと
飲食店を続けていると、ある日突然「もう厳しい」と感じる瞬間があります。
売上が大きく落ちたわけではない。
お客様が急にいなくなったわけでもない。
でも、前より疲れる。
前より利益が残らない。
前より人が集まらない。
前より毎日が重い。
この段階で大事なのは、「景気が悪い」「人が足りない」「材料費が高い」と言い続けることではありません。
その圧力を受け止め、店のやり方を変えられるかどうかです。
実際、日本の飲食店は構造的な圧力を受けています。
東京商工リサーチによると、2025年の飲食業倒産は1,002件となり、1996年以降で初めて1,000件を超えました。物価高倒産は136件、人手不足倒産は55件で、どちらも前年から大きく増えています。
ただし、ここで冷静に考えるべきことがあります。
人手不足は、今日いきなり始まった問題ではありません。
材料費の上昇も、昨日突然始まった問題ではありません。
何年も前から見えていた流れです。
それでも昔と同じやり方のまま、「人が足りない」「コストが上がった」と言うだけなら、それは経営判断の問題になります。
人手不足の本質は「人がいない」ことではない
問題は、人手不足そのものではありません。
「なぜその作業に、人が必要なのか」を見直していないことです。
たとえば、「注文を取る人が足りない」とします。
それなら、その注文作業自体を変えられないか考えるべきです。
お客様が席でQRコードを読み取り、自分のスマホから注文できる仕組みにすれば、スタッフが毎回テーブルへ行く必要は減ります。
もちろん、すべての店にQR注文が合うわけではありません。
でも、「注文を取る人が足りない」と言い続けるより、まず注文の流れを見直す方が、よほど建設的な経営判断です。
人が足りない時に最初にやるべきは、求人を増やすことではありません。
「人がいないと回らない店の形になっていないか」 を見直すことです。
- 料理を運ぶ人が足りないなら、セルフ受け取りにできないか
- 水やおしぼりの提供で手が取られるなら、置き場所を変えられないか
- 会計で詰まるなら、支払い方法や導線を変えられないか
- 仕込みに時間がかかるなら、メニュー構成を変えられないか
- 調理が複雑すぎるなら、機械化できる部分はないか
物価高の答えは「値上げ」や「我慢」ではない
物価高も同じです。
材料費が上がったから苦しい。
光熱費が上がったから苦しい。
人件費が上がったから苦しい。
これは事実です。
帝国データバンクも、2025年の飲食店倒産は900件で過去最多となり、食材費・光熱費の高騰や賃上げが利益を圧迫していると報告しています。
しかし、コストが上がった時に「値上げできない」と止まってしまう店は危険です。
値上げだけが答えではありません。
見直すべきことは多くあります。
- 原価率が高すぎるメニューはないか
- 手間がかかるのに利益が薄いメニューはないか
- 注文数は少ないのに仕込みだけ重いメニューはないか
- 売れているように見えて、実は利益が残っていない商品はないか
- ランチとディナーで同じ人員配置にしていないか
メニューは、ただ料理を並べるものではありません。
店の利益構造そのものです。
だから、物価高の時に必要なのは「我慢」ではなく、メニューの再設計です。
売れないメニューを減らす。
利益が残るメニューを前に出す。
仕込みを共通化する。
調理工程を短くする。
説明しなくても選びやすいメニュー名にする。
写真や表示を見直す。
これは大きな改革ではありません。
小さな見直しの積み重ねです。
「昔の成功体験」が、店を苦しくしている
多くの店が苦しくなる理由は、味が悪いからではありません。
店主が努力していないからでもありません。
ただ、昔うまくいったやり方を、今も同じように続けているだけです。
飲食店の環境は変わっています。
人は簡単に採れません。
安い材料は戻りません。
光熱費も下がるとは限りません。
お客様も、以前より価格に敏感です。
同じ地域の中でも、SNSやGoogleマップ、写真、メニュー表示で選ばれ方が変わっています。
それなのに、店側のやり方だけが昔のままなら、苦しくなるのは当然です。
ここで大切なのは、問題を「外のせい」にしないことです。
- 人手不足は、作業を減らすチャンス
- 物価高は、メニューを見直すチャンス
- お客様の変化は、伝え方を変えるチャンス
- 競合が増えたことは、自分の店の強みを言葉にするチャンス
店主は孤独です。
毎日、仕込み、営業、片付け、発注、スタッフ対応を一人で抱えています。
だからこそ、外から新しい視点を入れないと、同じ考えの中で回り続けてしまいます。
「うちは昔からこのやり方だから」
「この地域ではこれが普通だから」
「お客様が嫌がるかもしれないから」
この考えが強くなりすぎると、店は変われません。
苦しい時ほど「頑張る」のではなく「仕組み」を変える
少し変えるだけで、負担が減ることはあります。
- 注文をQR化する
- メニューを整理する
- 写真を変える
- 売れ筋を前に出す
- 仕込みを減らす
- セルフサービスを一部入れる
- Googleマップの写真を整える
- 店の強みを一文で伝える
こうしたことは、派手なマーケティングではありません。
店を続けるための現実的な改善です。
QrodaのようなQR注文も、その一つです。
目的は「流行っているから入れる」ことではありません。
- 注文対応に時間を取られているなら、その時間を減らす
- スタッフが少ないなら、少ない人数で回せる形にする
- メニュー変更が多いなら、紙メニューの更新負担を減らす
- 外国人客がいるなら、多言語で迷わず注文できるようにする
つまり、ツールを入れることが目的ではありません。
店の負担を減らし、利益が残る形に変えることが目的です。
今までのやり方を疑う勇気
飲食店が苦しくなった時、最初に見るべきものは売上だけではありません。
- どの作業に時間を取られているか
- どのメニューが利益を削っているか
- どの場面でスタッフが止まっているか
- どの情報がお客様に伝わっていないか
- どの古いやり方を、理由なく続けているか
圧力を感じた時点で、店はまだ変われます。
でも、何も変えずに「人が足りない」「コストが高い」と言い続けるだけなら、その先にあるのはさらに強い疲弊です。
飲食店経営で大事なのは、根性だけではありません。
変化を読むこと。
原因を分解すること。
作業を減らすこと。
利益が残る形に直すこと。
お客様に伝わる見せ方に変えること。
苦しい時ほど、店を守るために必要なのは「もっと頑張ること」ではありません。
今までのやり方を疑うことです。